PRODUCTION NOTES

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  • 観客の胸に刺さってほしいという想いが叶った、東京国際映画祭 観客賞の栄誉

    本作は、第26回東京国際映画祭のコンペティション部門に出品され、一般上映時には、すべて満席を記録した。映画の強烈なメッセージに感動した観客たちは目頭を熱くしながら、舞台挨拶に立った監督と俳優に、長く大きな拍手喝采を送った。その結果、本作は観客賞受賞の栄誉に輝いた。この賞は、映画祭に参加した観客の投票から授与されるという点でより深い意味を持つと、スタッフキャスト全員が感じている。 長編映画監督デビュー作で、多大な成果を収めたイ・ジュヒョン監督は、受賞に対して、「観客の胸に刺さってほしいという想いが伝わったことに、心から感謝しています。映画を通じて、国家の理念から生まれる痛みや、家族の大切さについて、改めて考える機会になることを願っています」と語っている。 さらにジュヒョンは、各国で上映されることへの想いを次のように伝えている。「映画への夢を抱いて走ってきましたが、長編映画を作ることが常に遠くに感じられ、多分私には叶えられない夢だと思ったことも少なからずありました。今回、尊敬するキム・ギドク監督の脚本で映画を撮れたのは、私にはあまりにも大きな幸運でした。長編映画デビュー作がこの作品で、本当に幸せです。シナリオで感じた温かい人間味とメッセージが、観客の皆さんに伝わることを願っています。」

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  • 尊敬する師から“希望の光となる映画”を作ることを託された新人監督

    フランスの学校で映画を学んでいた時、キム・ギドク監督の作品に多大な影響を受けたイ・ジュヒョンは、「学業を終えた後、一番最初にすべきことは、韓国に戻って、キム・ギドク監督に会いに行くことだと思いました」と語る。キム・ギドク製作・脚本の『プンサンケ』を監督したチョン・ジェホンの助けを借りて、面会が叶ったという。ちなみに、『プンサンケ』は本作で、班長と夫役のスパイが映画館で見る映画として使われている。「宿題のチェックを受けるように、キム・ギドク監督に自分の作品を、お見せしました。」とジュヒョンは、その時のことを振り返る。この出会いがきっかけとなり、ジュヒョンは本作の監督に指名されることになった。 製作と脚本・編集を手掛けたキドクは、「人間とは、家族とは何かを問い、南と北の将来を考えた時に、一筋の希望の光となる映画を作りたかった」と語る。彼が書き上げた脚本を初めて読んだ時のことを、ジュヒョンは次のように思い出す。「人間の善と悪が共存している、温かい物語です。南北分断の話ですが、私たちの民族の苦痛はもちろん、ひいては全人類の苦しみ、さらには国家の理念から生まれる個人の葛藤までも描いています。読み終えた瞬間の感動を、今でもハッキリと覚えています。本作を演出するに当たり、その感動を忘れないようにすることと、脚本のメッセージを何よりも大切にすることが、最も重要なことでした。」 すべての人間は、生まれた瞬間から、必ずしも自分で選べるわけではない共同体に所属する。家族、社会、国家に至るまで、いくつかの共同体の中で生きていくことになるのだ。ジュヒョンは、「そこから生まれるアイデンティティーの悩み、共同体の理念、それによって発生するパラドックスを描きたかった」と語る。

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  • 二重生活を送る北朝鮮スパイという難役に選ばれた、4人の新旧実力派俳優

    隊長の役には、キム・ユミが抜擢された。TVドラマ「ハートレスシティ ~無情都市~」でカリスマ的な実業家を演じて深い印象を残した彼女は、今回さらに強い魅力を発揮している。繊細な感情表現で、貞淑な妻から冷酷なスパイに変貌する過程を完璧に演じたキム・ユミは、「あまりにも大変な撮影だったので、限界を感じて投げ出したい時もありましたが、その気持ちに打ち勝てて良かったです。観客の皆さんに深い共感を抱いてもらえればうれしいです」と語っている。 彼女とニセ夫婦で活躍することになるスパイのキム・ジェホンには、チョン・ウが選ばれた。映画初主演作『風』で大鐘賞新人男優賞を受賞し、演技力を立証したチョン・ウは、TVドラマ「応答せよ1994」で再び脚光を浴びた。本作では、臨場感溢れる北朝鮮なまりを披露して、映画の完成度を高めた。 祖父役のスパイには、TV、映画、舞台と幅広く活躍するベテラン俳優ソン・ビョンホがキャスティングされ、長い歳月によって蓄積された深い痛みを持つ北朝鮮出身の老人役を哀愁を込めて演じ、ドラマに真実味を加えた。 北朝鮮スパイ家族と、韓国人家族の橋渡し役になる最年少スパイ、ミンジ役には、TVドラマ「優しい男」で注目されたパク・ソヨンが抜擢された。本作が映画デビュー作だが、深みのある演技で高く評価されている。

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