レッド(アカ)とか、左とか右とか、北とか南とかいうと、何だか物騒な政治映画だと思われるかもしれませんが、この作品にとってそれは単なる舞台装置のようなものです。
そもそもタイトルは『ファミリー』でいいんじゃないかとさえ思います。
それほどまでに、この作品が訴えてくるのは「家族」の愛、または「家族」を想い求める人間の切なさです。
僕は家族をやみくもに讃歌したり、絆のゴリ押しをするような物語は好きではないですが、この作品にはそんなチャラさはカケラもありません。
大層な大義名分を掲げる人も、そんなものは何も持たずに暮らす人も、人間は結局みんな同じものを欲するし、それには敵わない。ある意味、絶望的なほどです。
そんなどうしようもなく存在するものが、家族なのかな、と。
僕がこの映画で特に気に入ったのは、エンタメなメロドラマであるところ。
僕が思うエンタメ感というのは、観客を飽きさせずに映画に引き込む度合いのことで、別に楽しいジャンルでなくてもいいのです。
どんな立派なテクニックがあっても、見ていてつまらない映画はダメです。
その点、この作品は完璧なエンタメ作でした。
そして最後には、死ぬほど泣かせてくれます。
心臓がザワザワして、自分の感情が動くのが実感できます。
映画のメッセージを分かりやすく伝えるために、わざとメロドラマに仕立てたのだと思いますが、本当に極上のメロドラマです。
映画の後半、北のニセ家族が状況的に追い詰められながらも、ホンモノの家族のようになっていく辺りから、僕の感情はもう完全に北の家族と同化。
さながらツツジ班第5のメンバーです。
ベク班長とジェホンの立ち場に自分を投影し、家族(チーム)の身を案じては涙、涙。
最後には隣りのダメ家族の姿まで愛しく切なく見えて、ひたすら泣く。
そして泣き疲れた観客に少し光を与えるラストシーンも、ブラボーでした。